住むコト -大田区のまちづくりを考える-

大田区でまちづくりの活動をしている「住むコト」の活動ブログです

【都市マス】住むコトメンバーの公述②

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住むコトから5人のメンバーが東京都の都市計画マスタープランに対しての公述その2です!

 

その1はこちら→

【都市マス】住むコトメンバーの公述① - 住むコト -大田区のまちづくりを考える-

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私、野沢聡子は大田区の住民で、今現在は多摩川河口の干潟の清掃と子供たちの自然観察学習支援などのボランティア活動をおもに行っております。

本日は、「東京都市計画、都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」について私見を述べさせていただきます。

「東京都市計画の改定の基本的な考え方」の2)都市づくりの目標と都市づくりの戦略の(1)都市づくりの目標の中で、東京都は「みどりを守り、まちを守り、人を守るとともに、東京ならではの価値を高め、持続可能な都市・東京を実現していく」と述べています。この目標が実現すれば、東京は間違いなく世界に誇れる都市になるでしょう。でも、現状を見る限り、この目標が「絵にかいた餅」にならないかという不安をぬぐえません。

というのも、生まれてからずっと住んでいる大田区、鵜の木地区も、特にこの10年ぐらいで大きく様変わりし、東京での「みどりを守り、まちを守り、人を守る」ことがいかに難しいかを実感しているからです。そこで、この3点のキーワードから私の意見を述べさせていただきます。

  • みどりを守る

私の家は多摩川国分寺崖線の南端の比較的みどりが多い地区にありますが、その貴重なみどりも、最近、どんどん消えています。

その1つが「多摩川せせらぎ公園」で、周辺住民の反対を押し切って1000本以上の木々が切り倒され、そこに多目的の大きな建造物が建設中です。これなどは、みどりを守ることとは逆行している時代遅れの「箱もの行政」と揶揄される開発事業です。

そもそも、今回、東京都市計画の改定に示されている一人当たりの公園緑地目標は「おおむね10㎡」(都全体)となっています。この10㎡には河川敷の緑地も入っていると聞いています。ちなみに、世界の主要都市の一人当たりの緑地面積(2018年)でアジアの都市だけを見ても、2位は香港で105㎡、7位の台北は50㎡、クアラルンプールは8位で44㎡、ソウルは17位の23㎡など。東京は25位です。他のアジアの都市と比較しても、20年後の東京の公園の整備の目標値はあまりにも低いと思います。

みどりがあれば木陰ができます。また、CD2枚ほどの幹の木が2本あれば、人間ひとりが1日に排出する二酸化炭素を吸収してくれるそうです。今夏も熱中症で大騒ぎですが、加速する地球の温暖化対策の1つとして、東京のみどりの消滅をこれ以上放置せず、みどりを守るためのより厳しい都の行政指導を行うべきです。

東京都のHPで紹介されている「街のすきま緑化事業」(環境局)は素晴らしいアイデアと思ったのですが、何故か、今は終了しているとのこと。例えば、大田区鵜の木3丁目にある小さな児童公園の横には「東京都有地につき敷地内への立ち入り及びごみ捨て禁止」(都市整備局)の看板のついたフェンスで囲まれた空き地があります。同じような都の有地は他にもあると思います。とりあえずは、都の有する空き地に木々を植え、みどりを増やし、フェンスを外し、住民に開放することから始めてはどうでしょうか。

■まちを守る、人を守る

昔は自宅に庭がなくとも、隣の家にはみどりがあり、子供が遊べる空き地もありました。今はそのみどりがまちから消え、空き地が減り、住宅の過密化が進んでいます。

例えば、私の家の近くの環八沿いには室町時代から続く天明家の本家・分家の「野鳥の楽園」といわれていた広大な敷地がありましたが、そこも近年大手民間事業者による大きなマンションになり、近所の屋敷跡にも「鉛筆ハウス」といわれる住宅が6軒建ちました。このまま宅地化が進み、住宅が密集し、みどりが消滅すれば、恐らく、人々の心は殺伐として次第に病み、災害時には水害や火災などで人命が脅かされるのではと危惧しています。

私たちの心の安らぎのため、温暖化対策として、また、いつ首都直下地震が起きるか判らない東京から人々の命を守るためにも、東京の住宅地に「緑地空間」を増やすという長期的視点に立ち、金儲けに走るディベロッパーたちの開発事業を今すぐに規制すべきです。

利便性や安全とセキュリティー、健康と福祉などの指標が高い東京の「生活の質(Quality of Life))は世界主要都市の中で6位にもかかわらず、東京に住む人々の「個人の幸福度」指数は65か国中48位です。私は「個人の幸福度」が低い要因の一つが東京の人々の住環境にあるのではないかと思います。コロナ禍の中、狭い家で外出自粛に耐え、テレワークのために浴室に籠ったという人の話もありましたが、それを「辛抱強さは日本人の美徳だ」なんて笑えません。住宅は手狭でも裏庭があるという諸外国の住宅事情を見て心からうらやましく思いました。共有の裏庭でもいい、近くにみどり豊かな公園があってもいい。そうした住環境があれば、人々はそこに集い、憩い、そして癒されるでしょう。

「まちを守る」ことと「人を守ること」は切り離して考えることはできません。

最後に、「人を守る」という観点から、東京の中心地で進んでいる電柱の地下化を、私たちの住宅地でも促進してほしいと切に願っています。首都直下地震で狭い路地の電柱が倒れたら本当に危険です。電柱地中化は災害時のリスク回避となるばかりか、街の景観もよくします。(外国人が東京で一番驚くのは電信柱の多さだそうです)。もう1つは東京の道路整備で、一方通行なども取り入れた自転車、自動車、歩行者をそれぞれ区分けした安全な自転車道の確保、整備が急務と思います。コロナの影響で自転車通勤者をする人たちの交通事故が増える危険を回避するためです。

 冒頭に、「社会経済情勢の変化などへの対応が必要となった場合は、プランの変更を適時、適切に行うものとする」と記されています。今すぐ、行政はこれまでの経済優先から、人びとが真の「豊かさ」を感じられる住民主体の東京の街づくりへと方向転換をすべきです。

コロナ禍で私たちの既成の価値観や生活スタイルのあり方の見直しが始まり、多くの事業計画もまた戦略の立て直しを迫られる今、20年後を見据えた東京の都市計画のグランドデザインのパラダイムシフトが不可欠です。今こそ、人々が立ち止まって真の「豊かさ」とは何かを考えるよいチャンスではないでしょうか。よろしくお願いします。