第48回&第49回消費者生活展
年一度の大田区消費者生活展、一昨年(2020年)は折りからのコロナ感染状況を鑑みて中止。
昨年(2021年)は、なんとか開催に漕ぎ着けるも、Web展という初めての試みでの生活展でした。
今年(2022年)、昨年の経験を生かしてかなり改善された生活展となりました。
住むコトでは、メンバーのほとんどが過去の生活展の経験がなく、全てが手探りでの苦渋の連続でしたが、なんとか形になり、皆様にもこうして見に来ていただけることができました。
詳しくは、
第49回大田区生活展 | Sumucoto をご覧ください。
【都市マス】住むコトメンバーの公述③
住むコトから5人のメンバーが東京都の都市計画マスタープランに対しての公述その3です!
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大田区在住の神田順と申します。大学で主に建築構造学について研究・教育に
携わってまいりました。現在は、建築基本法制定準備会という団体の会長とし
て、我が国の建築制度のあり方について、提案や提言を行っています。現状の
法制度では、短期的な市場経済の原理が優先して質の高い建築が生まれにくく
なっていることを危惧し、新しく建築基本法の制定のための運動を展開してお
ります。
都市計画区域の整備・開発及び保全の方針(原案)に対して、区部を対象とし
て意見を述べさせていただきます。「東京都市計画原案」は、2017年9月発行
の「都市づくりのグランドデザイン」(A4版208ページ)の内容をもとに、そ
れを都市計画のための言葉に置き換えたのみで、今般のコロナ対応の問題が視
野に入っておりません。生活のあり方、都市のあり方を考えると、根本的な見
直しが必要ではないでしょうか。原案のまま進めることに対しては、大きな不
安を覚えるものです。
基本的な考え方ということでは、目標としてESGやSDGsへも言及されていま
すが、ただ考え方を取り入れるのみでなく、まさに、SDGsの17の目標一つ一
つが反映されることを基本とする都市計画にすることが必要です。都市づくり
戦略としては、言葉を変えて、さまざまなキーワードを織り込んで8項目を挙げ
ていますが、総花的な戦略では、今まで同様に、民間事業者任せの建築する権
利の保障にしかなっていません。10年、20年さらには50年先を見据えると、戦
略③の災害リスク低減と環境問題対応を最優先する形で、東京の都市計画の明
確な方向性をうたうことが必要です。そして、それをポスト・コロナの都市の
あり方として、新しく計画し直す必要があると考えます。
まずは、人口減少社会における東京の都市計画をどのように考えるかについて
具体的に提案をさせていただきます。現実の統計を見ると、当初想定していた
ようには東京の人口は減少していません。むしろ微増です。それは、東京の一
極集中がまだ続いているからです。これをこのまま放置してはいけません。こ
のことは、今回のコロナの問題そのものでもあります。我が国で東京が、まず
第一に新型コロナ感染症の脅威にさらされたことを思うと、都市計画において
も、一極集中を是正し地方の活性化を支援することです。東京として具体的に
どのようにしてそれを可能にするかということを考えると、人口の流入を抑え
、建物の総床面積を全体としては縮小していくことではないでしょうか。これ
は、直接的に災害低減にもつながります。
人口流入の問題は、税法上の問題ともかかわり対応が難しい面がありますが、
私の住まいの近くの例をあげてみます。例えば200㎡の土地に1家族4人で住ん
でいたけれど子供が巣立ち、別のところに住む。親2人になり、やがて亡くな
ると、土地は開発業者の手にわたり、業者は売れるように3分割して3軒の3階
建てに変わる、という状況があちこちで起きています。あるいは、若者用のワ
ンルームアパートとして経営するということで、もっと極端に人口増を奨励す
るような場合も多くみられます。結果として住まい方は過密となり、当然緑地
面積は減らされ、住環境は悪化してしまうわけです。これを変えるのは、個人
の努力だけでは不可能です。都市計画として、このような事態が生じないよう
な政策と規制が不可欠です。すでに地価が高騰している中で、都区内ですべて
の家族に200㎡の土地を提供することが無理であることは想像できますが、少
なくともそのような住み方が引き継がれるような制度を考えるとともに、政策
としてのワンルームアパートの規制なども含めて、人口流入を都市計画として
抑えることを考えなくてはいけないと思います。
住宅の持ち主が亡くなると、空き家となる可能性が生じてしまいます。これも
大きな問題になっています。安易に経済原理に委ねると、すでに述べたような
状況が生まれてしまうので、そうならないように税法上の優遇措置なども考慮
に入れて質の高い住生活が可能となるようなしくみを考える必要があります。
スクラップアンドビルドではなく、ストックマネージメントとして展開できる
ように、都市計画でも方向性を明確に示すべきだと考えます。
戦後の住宅政策も、当初は公営住宅と公団との2本立てでスタートしたものが
、ほぼ需要が満たされるにしたがって、今や民間マンションの新築による市場
経済に任せてしまったことが、景観の面でも環境の面でも問題を生じています
。財政面を考えると公営住宅を増加させることが容易でないことは想像できま
すが、50年100年を考えると、セイフティネットの意味からも自治体の果たす
べき役割は大きいです。改築や減築などのストック活用により、質の高い中低
層集合住宅を、都や区が積極的に社会資産として運用していくべきです。良質
な住宅を長く活用できれば、結果的に社会の豊かさにもつながります。少しず
つでもその方向を都の姿勢として示してほしいと思います。
以上は、どちらかというと大田区としては、大部分が相当する新都市生活創造
域を対象とする意見になっていますが、ビジネスに重点をおいた中枢広域拠点
域に対しての都市計画の問題も、総床面積を、全体的には抑制の方向での検討
が必要だと考えます。と同時に、中枢広域拠点域であっても住宅は広く展開し
ており、今後も中低層居住地区の保全・整備も欠かせないのに、そのような視
点が認められず、頻繁に「建て替え促進」の言葉が登場しているのは、問題で
す。また新都市生活創造域であっても、すでに大規模事務所ビルが集中してい
る地域もあります。東京都区部をこのように2つに区分して都市計画のキーワ
ードを色付けすること自体に、無理があるのではないでしょうか。
大田区の場合、特に気になるのは、羽田空港周辺です。羽田空港の拡大は、今
年4月から始まった、増便のための新地上ルートなど、区の住民としては迷惑な
面が少なくないことは想像できると思います。また海上移転に伴う空港跡地は
国家戦略特区としての新しい拠点として位置づけられていることもあり
、SDGsの基本を逸脱する懸念が大きいです。国や自治体が大企業とともに経
済的な有効性をねらうことにより、住民視点での環境や自然環境配慮などが、
すでに軽視されて来ています。都市計画としても、将来計画に対して住民が積
極的に意向を示しやすいしくみをつくり、住民合意を前提としたまちが作られ
るよう配慮してほしいと思います。都としても区単位での防災を都市計画の中
にどのように位置づけるか、緊急の課題です。
これまでの意見を、具体的な形で都市計画に有効に展開することは何かという
と、緑化空間の増大です。人口減少社会で、さらには自然災害リスク低減を都
市計画の中に展開するには、緑と水辺空間の充実こそが有効な方法です。従来
の都市計画では、交通の利便性や効率性を重視し、災害ハザードを理解し、読
み解いて、都市計画に展開することをしてきませんでした。今や地震や洪水の
ハザードは地形や地盤、標高などとも関係し、調査研究の成果として誰でも見
られるようになっています。ハザードを理解した上で、リスクを減らすために
、都市計画の中での、明確な規制や誘導が必要です。都市計画が災害ポテンシ
ャルを考慮して作られて来なかったことは、大きな反省点になっています。是
非とも東京の都市計画の中では、災害低減を明確に位置付けてほしいと思いま
す。
区部の公園や緑地の現状は、何と言っても、とても貧弱です。過密を防ぐ意味
でも、自然災害を低減する意味でも、有効な緑地空間の配置・拡大を全区部に
、積極的に都市計画の中でうたうべきです。駐車場を緑化するだけでも地震や
火災へのリスクは低減できます。従来は大規模開発での公開緑地など極めて限
定的にしか行ってこなかったと言えます。これからは東京都区部の緑化面積の
増大こそが、都市計画のねらいであり、SDGs対応でもあると、胸を張って言
えるものにしていただきたいことをお願い申し上げて、私の意見陳述とさせて
いただきます。
【都市マス】住むコトメンバーの公述②
住むコトから5人のメンバーが東京都の都市計画マスタープランに対しての公述その2です!
その1はこちら→
【都市マス】住むコトメンバーの公述① - 住むコト -大田区のまちづくりを考える-
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私、野沢聡子は大田区の住民で、今現在は多摩川河口の干潟の清掃と子供たちの自然観察学習支援などのボランティア活動をおもに行っております。
本日は、「東京都市計画、都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」について私見を述べさせていただきます。
「東京都市計画の改定の基本的な考え方」の2)都市づくりの目標と都市づくりの戦略の(1)都市づくりの目標の中で、東京都は「みどりを守り、まちを守り、人を守るとともに、東京ならではの価値を高め、持続可能な都市・東京を実現していく」と述べています。この目標が実現すれば、東京は間違いなく世界に誇れる都市になるでしょう。でも、現状を見る限り、この目標が「絵にかいた餅」にならないかという不安をぬぐえません。
というのも、生まれてからずっと住んでいる大田区、鵜の木地区も、特にこの10年ぐらいで大きく様変わりし、東京での「みどりを守り、まちを守り、人を守る」ことがいかに難しいかを実感しているからです。そこで、この3点のキーワードから私の意見を述べさせていただきます。
- みどりを守る
私の家は多摩川の国分寺崖線の南端の比較的みどりが多い地区にありますが、その貴重なみどりも、最近、どんどん消えています。
その1つが「多摩川せせらぎ公園」で、周辺住民の反対を押し切って1000本以上の木々が切り倒され、そこに多目的の大きな建造物が建設中です。これなどは、みどりを守ることとは逆行している時代遅れの「箱もの行政」と揶揄される開発事業です。
そもそも、今回、東京都市計画の改定に示されている一人当たりの公園緑地目標は「おおむね10㎡」(都全体)となっています。この10㎡には河川敷の緑地も入っていると聞いています。ちなみに、世界の主要都市の一人当たりの緑地面積(2018年)でアジアの都市だけを見ても、2位は香港で105㎡、7位の台北は50㎡、クアラルンプールは8位で44㎡、ソウルは17位の23㎡など。東京は25位です。他のアジアの都市と比較しても、20年後の東京の公園の整備の目標値はあまりにも低いと思います。
みどりがあれば木陰ができます。また、CD2枚ほどの幹の木が2本あれば、人間ひとりが1日に排出する二酸化炭素を吸収してくれるそうです。今夏も熱中症で大騒ぎですが、加速する地球の温暖化対策の1つとして、東京のみどりの消滅をこれ以上放置せず、みどりを守るためのより厳しい都の行政指導を行うべきです。
東京都のHPで紹介されている「街のすきま緑化事業」(環境局)は素晴らしいアイデアと思ったのですが、何故か、今は終了しているとのこと。例えば、大田区鵜の木3丁目にある小さな児童公園の横には「東京都有地につき敷地内への立ち入り及びごみ捨て禁止」(都市整備局)の看板のついたフェンスで囲まれた空き地があります。同じような都の有地は他にもあると思います。とりあえずは、都の有する空き地に木々を植え、みどりを増やし、フェンスを外し、住民に開放することから始めてはどうでしょうか。
■まちを守る、人を守る
昔は自宅に庭がなくとも、隣の家にはみどりがあり、子供が遊べる空き地もありました。今はそのみどりがまちから消え、空き地が減り、住宅の過密化が進んでいます。
例えば、私の家の近くの環八沿いには室町時代から続く天明家の本家・分家の「野鳥の楽園」といわれていた広大な敷地がありましたが、そこも近年大手民間事業者による大きなマンションになり、近所の屋敷跡にも「鉛筆ハウス」といわれる住宅が6軒建ちました。このまま宅地化が進み、住宅が密集し、みどりが消滅すれば、恐らく、人々の心は殺伐として次第に病み、災害時には水害や火災などで人命が脅かされるのではと危惧しています。
私たちの心の安らぎのため、温暖化対策として、また、いつ首都直下地震が起きるか判らない東京から人々の命を守るためにも、東京の住宅地に「緑地空間」を増やすという長期的視点に立ち、金儲けに走るディベロッパーたちの開発事業を今すぐに規制すべきです。
利便性や安全とセキュリティー、健康と福祉などの指標が高い東京の「生活の質(Quality of Life))は世界主要都市の中で6位にもかかわらず、東京に住む人々の「個人の幸福度」指数は65か国中48位です。私は「個人の幸福度」が低い要因の一つが東京の人々の住環境にあるのではないかと思います。コロナ禍の中、狭い家で外出自粛に耐え、テレワークのために浴室に籠ったという人の話もありましたが、それを「辛抱強さは日本人の美徳だ」なんて笑えません。住宅は手狭でも裏庭があるという諸外国の住宅事情を見て心からうらやましく思いました。共有の裏庭でもいい、近くにみどり豊かな公園があってもいい。そうした住環境があれば、人々はそこに集い、憩い、そして癒されるでしょう。
「まちを守る」ことと「人を守ること」は切り離して考えることはできません。
最後に、「人を守る」という観点から、東京の中心地で進んでいる電柱の地下化を、私たちの住宅地でも促進してほしいと切に願っています。首都直下地震で狭い路地の電柱が倒れたら本当に危険です。電柱地中化は災害時のリスク回避となるばかりか、街の景観もよくします。(外国人が東京で一番驚くのは電信柱の多さだそうです)。もう1つは東京の道路整備で、一方通行なども取り入れた自転車、自動車、歩行者をそれぞれ区分けした安全な自転車道の確保、整備が急務と思います。コロナの影響で自転車通勤者をする人たちの交通事故が増える危険を回避するためです。
冒頭に、「社会経済情勢の変化などへの対応が必要となった場合は、プランの変更を適時、適切に行うものとする」と記されています。今すぐ、行政はこれまでの経済優先から、人びとが真の「豊かさ」を感じられる住民主体の東京の街づくりへと方向転換をすべきです。
コロナ禍で私たちの既成の価値観や生活スタイルのあり方の見直しが始まり、多くの事業計画もまた戦略の立て直しを迫られる今、20年後を見据えた東京の都市計画のグランドデザインのパラダイムシフトが不可欠です。今こそ、人々が立ち止まって真の「豊かさ」とは何かを考えるよいチャンスではないでしょうか。よろしくお願いします。
【都市マス】住むコトメンバーの公述①
上記の記事でご報告した通り、住むコトから5人のメンバーが東京都の都市計画マスタープランに対して意見を公述してきましたので、その内容をご紹介してまいります。
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都市計画マスタープラン公述会に参加しました
東京都の「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画マスタープラン)」の原案に対して、都民が自由に意見を陳述する場(公聴会)が開かれ、住むコトのメンバー5名が出席、それぞれの視点から東京都のまちづくりに対して意見を表明してきました。
★東京都 都市計画マスタープランに関するページ
都市計画区域の整備、開発及び保全の方針等の概要について | 東京都都市整備局
★対象となる原案
・ 東京都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(原案)
・ 多摩部19都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(原案)
・ 島しょ部6都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(原案)
公聴会は都内で数回開催されましたが、住むコトは8/20,21(昼・夜)の3回に参加しました。
公聴会は都庁内の大きなホールで開かれました。傍聴人として一般の聞きに来た方たちが見守る中、公述人は一人10分の持ち時間で意見を表明できます。
住むコトから参加したメンバーは、みな東京都の都市計画案に問題があるという点から話をしましたが、他地区から参加者からも、住民不在の再開発に反対する意見など、それぞれの地域の課題を踏まえた意見表明が多く聞かれました。
公聴会終了後に、他地区の方ともお話することができ、今後の連携につながればと期待しています。
住むコトの活動紹介
私たち『住むコト』は、住まい、地域、コミュニティといった住環境、そこでの豊かな暮らし方、公園や環境といったまちの在り方について広く学習し、情報提供、提言を行うことを目的に、2019年8月に設立。大田区消費者団体連絡会のメンバーとして活動しています。
愛する大田区でより良く暮らしたいと願うメンバー(現在6名)が、月一回のペースで消費者センターに集い、勉強会を実施しています。これまで、「子どもの住まい教育」「生きのびるマンション」「建築の法制度について」「大田区の緑化率」と多岐に亘ったテーマで学習してきました。また昨夏の台風による千葉県のゴルフ場被害を受け、悪天候時の区内施設の対応について調査を実施しました。
『住むコト』にご興味をお持ちの方は是非お気軽に勉強会へご参加ください。